会計を武器にしよう!

会計の気になった論点について、おもいのままに語っています。自分で書きながら思考を整理して、自分の会計観を日々磨いております。

連結基礎論点 ~成果連結 商品の未実現利益の処理①~(10分記事)

こんにちは。weaponです。

本日は連結を扱いたいと思います。多分次回も連結をやります(一週間後くらい?多分…)。はじめて連結を勉強したとき、「なんだこれ…」ってなりませんでしたか?僕は何が何だかわからなすぎて頭がおかしくなりそうでした。まだ資本連結はいいけど…成果連結の仕訳…いったいどうなってんだこれって感じでしたね。売上原価と商品でシワケキルノ・・・?

そこで、今回取り上げるテーマはズバリ、「成果連結」。商品の未実現利益について、なぜ連結修正仕訳があのようになるのか、みなさんの理解の助けになれるように、がんばってみたいと思います。

 

まず、このようなケースを想定します。当社はA社の株式を80%持っており、子会社と判定されています。また、当社はA社に仕入れてきた商品を販売し、A社が当社から仕入れた商品を外部の顧客に販売するというビジネスの形態をとっているとします。

図に表すとこんな感じ。

 

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さて、次は具体的な活動を帳簿上に記していきます。

  • 当社について

1.当社は仕入先から商品を現金3,000で仕入れました。

2.当社は、A社に商品をすべて5,000で販売し、対価を現金で受け取りました。

  • A社について

1.A社は、当社から商品を5,000で仕入れ、現金で払いました。

2.A社は、外部の顧客に持っている商品(5,000)の半分(2,500)を3,000で販売しました。

※それ以外の条件は今回は無視する

これをそれぞれの企業が仕訳すると、以下のようになります。

 

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ここまでは個別上の話なので問題ないかと思います。次に連結財務諸表の作成に移りたいと思います。まず、連結上はどんな感じかというと、

 

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ここで特筆すべきポイントは、連結上は当社とA社の間の取引は実態が「内部取引」とみなされることですね。

それでは、当社とA社を合わせた企業集団の財務諸表を作っていきます。まずはそれぞれの財務諸表を単純合算していきましょう。

二つの財務諸表を単純合算した結果、売上高の合計は8,000(当社がA社に販売した5,000とA社が外部に販売した3,000の合計)、売上原価の合計は5,500(当社がA社に販売した分の3,000とA社が外部に販売した分の2,500の合計)、利益はその差額となります。また、貸借対照表上では当期に売れなかった商品が2,500残っていることになっています。

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ここで、合計の数値に着目してみてください。企業集団の観点から見たら当社もA社もいわゆる「当社」なのですが、果たして本当に売上高8,000もあげているでしょうか…それ以外の項目も同じです。仕入先から仕入れてきた商品が、企業集団内部で別の企業に売っただけで帳簿価額が上がってしまっていいのでしょうか。

もちろんこれらの数値は経済的実態を表していないため、このままではダメです。そこで、このような親子会社間の取引は、連結財務諸表上その実態を表すように修正されます。

 

さて、ここからが本題です。あの仕訳の意味に迫っていきます。

もう一度状況を整理しましょう。

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連結上は企業集団が仕入先から商品を仕入れ、それを外部に販売するという実態となります。つまり、当社とA社の間の取引は企業集団内部の取引とみなされ、連結上は売上取引などはなかったことになります

また、仕入先から仕入れた商品で外部に販売していないものは、企業集団の観点から見ればただ仕入先から仕入れたまま、ということになります。つまり、仕入先から仕入れたままの価額で記帳しておくべきということです。

すると、個別から修正するべき箇所が3つ出てきますね。

①当社のA社への売上取引

②A社の当社からの仕入取引

③売上原価算定(商品の価額算定)のための決算整理仕訳

です。これらを連結修正仕訳で直していきます。

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連結修正仕訳の手順は以下の図の通りです。

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2.③の修正においては、個別上行った売上原価算定の決算整理仕訳を一度取り消し(企業集団の観点からは2,500ではないので)、仕入れた時の価額でもう一度仕訳を行っていると考えるとわかり易いかなと思います。結果として、修正するのは当社がA社に販売する際に加味した未実現利益の部分となります。

なお、修正仕訳で使われる勘定が「売上原価」になっているのは、連結修正仕訳が行われるのが連結精算表上だからです。

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連結精算表上では、個別上で確定した金額を単純に足し合わせてから、連結修正をおこなっています(赤い枠が修正仕訳を行う場所です)。個別上で一度売上原価として確定しているので、仕入勘定はなく、そのため修正を売上原価勘定で行うことになるのです。

ですので、意味としては仕入勘定を使っているのと同じです。

このような理由で、未実現利益の消去に関する仕訳は

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となります。

 

  • 会計士試験上、問題を解くとき

会計士試験では、多くの場合仕入先から仕入れた価額のデータは与えられていないと思います(今回のケースで言うと、3,000。今回はこの3,000を全額A社に売っているのでA社に残っている商品の元々の原価がわかっている)。そのかわりに「A社の期末時点での当社から仕入れた商品は〇〇円である」といった情報と「利益率〇%で販売している」などの指示が入ると思います。ですので、それらを使って期末商品に係る分の未実現利益を算出してください。(以下の図は参考までに)

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今回のテーマは以上です。ここのところまだ会計士試験に関連するトピックを扱っていますが、これからときどき会計士試験とは少し外れたトピックについても書いてみたいと思っています。

 

 

次回も連結会計絡みで行きたいと思います!お楽しみに!